たたら製鉄に由来する奥出雲の資源循環型農業

~仁多米・奥出雲和牛・シイタケ・ソバの複合的農業システム~

 島根県奥出雲地域は「たたら製鉄」のために切り崩した山々を500年以上にわたって棚田へと再生してきた。同時に拡大する棚田の耕作のため17世紀初頭から続けた和牛改良の知識を肉用牛の飼養管理技術に受け継ぎ、系統を引き継ぐ種雄牛(仁多牛)を造成し、飼育で得た堆肥による土づくりで全国を代表する「仁多米」を育んでいる。一方、約30年周期で伐採してきた薪炭林は、シイタケ生産に循環利用の知識を継承し、輪伐による健全な森林や水田畦畔に棲むミツバチが受粉を促し、在来ソバの結実率を高めながら遺伝資源を今日に伝え、「出雲そば」が日本三大蕎麦となった。

 農文化としてハレの日には蕎麦を振る舞い、稲作や和牛の信仰も根付き、鉱山跡地に拓かれた棚田には墓地や神木を祭った小山(鉄穴残丘)が無数に点在し、神(自然)を畏れ先祖を敬う日本の宗教観をよく示す農業景観を形成している。

 これら、たたら製鉄に由来する稲作、和牛、シイタケ、ソバの農林畜産業が有機的に結びついて高品位な農産物を生み、当地域の農業生産額の約90%を占めている。これによって農家の生産意欲を高め、当地域の生物多様性が保たれるという、世界に類い稀な資源循環型農業が行われている。

 

日本農業遺産・・・・・将来にわたり受け継がれるべき、伝統的な農林水産業が営まれている地域を農林水産大臣が認定するものです。平成31年(2019年)2月15日 認定

 

たたら製鉄に由来する奥出雲の資源循環型農業